住宅を建てたり、築50年以上の古民家を購入する際に、必ず話題に上るのが『耐震性』です。
耐震とは、地震などの外力に対して、建物が倒壊したり、損傷したりしにくい性能のことです。また今後30年の間に大地震に見舞われる可能性がとても高いと言われている日本において、大地震への備えともいえます。
家づくりの条件として、地震に対する強さを重視される方は多いです。安心で良質な住宅に居住できるよう、一般消費者にもわかりやすい、地震に対する建物の強さ(耐震性)を表す指標が『耐震等級』です。
耐震等級は、地震の被害に見舞われることが多い日本で、家を建てる際に、必要不可欠な判断基準です。耐震等級をより深く理解することが、安心・安全な家づくり・家選びにつながります。
耐震等級の知識を持つことは、自分が納得できる家づくりをする際に大切な要素です。大切な家族と過ごす住まいだからこそ、その安全性は重要な基準になります。そして地震からもご家族の命を守り、地震が発生した際に、耐震等級2や3の家づくりは大きな安心材料となるでしょう。
耐震等級3の獲得は、新築住宅では一般的です。しかしリフォームの場合、既存の建物の構造や設計に基づいて耐震性を評価し、必要な補強を行う必要があるために非常に困難です。また耐震の評点を上部構造評点という指標で計算する必要があり、これには専門的な知識と経験が必要です。しかし様々な方法で耐震補強をすることは可能です。
◇耐震等級とは
耐震性の指標として現在幅広く用いられているのが、施主様に判りやすい耐震性の判断基準=耐震等級です。
耐震性能は等級1から等級3まで3段階に分かれています。
等級1は、建築基準法レベルの耐震性能を満たす水準で、これ以下は危険というギリギリの耐震性能で、災害後に住み続けることは困難であり、建替えや住替えが必要となることがほとんどです。
等級2は等級1の1.25倍、等級3は等級1の1.5倍の強さがあると定められています。
一般的に等級が上がるほど柱や梁が太くなり、窓などの開口部が小さくなります。
■耐震等級1 (建築基準法の最低限の水準)
・震度5程度の地震であれば住宅が損傷しない程度
・震度6強から7程度=阪神・淡路大震災や熊本地震クラスの揺れ)に対しても倒壊や崩壊しない
しかしこれは「倒壊はしないが、一定の損傷を受けることは許容している」ということなので、その後で補修や、損傷の程度によっては建て替えが必要になる可能性があります。
■耐震等級2
「長期優良住宅」の認定基準にも設定されている水準であり、耐震等級1の、1.25倍の地震に耐えられる性能・耐震強度です。また災害時の避難所として指定される学校などの公共施設は、耐震等級2以上の強度を持つことが必須です。
震度6強~7でも軽度の補修でその後も長く住み続けられるという基準で設計されています。
■耐震等級3
等級3は最も高いレベルであり、耐震等級1の1.5倍の地震力に耐えられるだけの性能・耐震強度水準です。一度大きな地震を受けてもダメージが少ないため、地震後も住み続けられ、大きな余震が来ても、より安全です。震度7の揺れが、立て続けに2回起こった熊本地震では、1度目は耐えたが2度目の地震で倒壊した住宅も多数あった中、等級3の住宅は2度の震度7に耐え、倒壊数はゼロだったことが明らかになっています。
災害時の救護活動・災害復興の拠点となる消防署・警察署は、多くが耐震等級3で建設されています。
◇日本の耐震基準の移り変わり
耐震基準は人命を守ることを目的とした、地震に対して建物が安全であるための基準です。日本の耐震基準は、地震被害の経験や学術研究の成果を踏まえて、時代とともに改正されてきました。
耐震基準は1981年以前・1981年以降、2000年以降と、大きく3つの時期に分けられます。1981年に耐震基準が大幅に見直され、大きく変わりました。それにより、1981年5月以前に建築された建物を「旧耐震基準」、1981年6月以降の基準で建築された建物のことを「新耐震基準」という表現で区別されるようになっています。その後、1995年に発生した阪神淡路大震災の甚大な被害を目の当たりにし、さらに耐震基準を見直すこととなり、2000年にも基準が見直されました。
■旧耐震基準と新耐震基準の違い
耐震性能では大きな違いがあります。 旧耐震基準が震度5程度の地震で倒壊しないレベルが要求されているのに対し、新耐震基準は震度6強~7程度の大規模地震で倒壊しないレベルが求められています。2016年4月14日に発生した熊本地震においても、耐震基準が大きくクローズアップされました。いずれにしても、近年において、大地震の発生が増えている事からすると、旧耐震基準の物件では、倒壊の危険や不安があります。
旧耐震基準の建物はまだ多く存在しています。旧耐震の自宅に住んでいたり、両親が住み続けていたりする、または古民家を改修して住む場合などなど。
旧耐震基準の建物をそのままにしておくと、次に起こるかもしれない震災の際に耐え切ることが出来ない危険性があります。実際に私達は、ニュースや新聞から、倒壊した住宅を目の当たりにし、被災の現実を突きつけられています。その被害を少しでも食い止め、来たるべき地震に備えるために耐震工事は必ず行うようにしましょう。
■耐震補強工事が必要となる建物の目安
・築年数
築40年以上の中古住宅に住んでいる場合は、一度耐震診断を受けると良いでしょう。いつ建てた建物なのか確認しましょう。
・壁面積
壁の面積も耐震性に関わってきます。少ない壁面積で2階を支えていたりするとなると、建物の強度として劣る可能性があります。リビングに大きな窓がある・玄関横がガレージになっていたりする等は、通常の住宅に比べて壁面積が少なめです。
・地盤
建物が建っている地盤そのものの強度が弱い場合は、耐震性も劣る可能性が高くなります。正確な地盤の状態を知るためには、地盤調査が必要になります。地盤調査が必要な場合、地盤の強度をしる為には専門の業者に地盤調査を依頼することをお勧めします。
・吹き抜け
吹き抜けによって開放感のある家は、耐震性が劣る可能性があります。吹き抜けの空間を確保するために壁や柱の量を削っているため、通常の住宅と比べると強度が低くなる傾向にあるといえます。吹き抜けの分、2階以上の床面積も狭くなり、横揺れに対する強度も劣ります。
■耐震補強工事の方法
リフォーム耐震等級3の獲得は可能か?
可能です。
方法としては以下のポイントがあげられます。
耐震基準のポイントは
★建物は軽い方が耐震性がある
★耐震の要である耐力壁の量は、多い方がよい
★床の耐震性能についてしっかり検討する
★耐力壁や耐震金物は、バランスよく配置されている
です。上記のことをふまえて
等級3、つまり耐震性の高い家をつくるには、次のような手段があります。
・壁の増設・強化
外壁やクロスの下地に耐震壁を設置して、耐震性を高める方法です。耐震性の高い下地や、筋交いなどの材を入れて強度を高めます。施工する面積によって費用は変わりますが、外壁や内壁を一度剥がして貼り直す作業があるので、他の工事方法と比べるとやや高額になりがちです。
・床を強化/屋根の軽量化
床に構造用合板を張る。
屋根は、瓦などを、より軽い素材に替えることで建物にかかる負荷を軽減します。建物を軽くすることで、耐震性を上げることができるのです。雨漏りや台風による損壊など、劣化が見られるタイミングでの補修がおすすめです。
・金具で柱と梁の接合部を強化
耐震性を高めるために、耐震金具を設置します。建物を構成する土台や柱などが交わる部分に設置することで、強度を補強。装置自体はそれほど大がかりなものではなく、耐震補強工事の中では比較的安価といえます。
・基礎を強化
基礎を打ち増ししたり、ひび割れを補強したりして、強度を上げる工事です。元々の基礎を活用するので、壁の増設よりは費用を抑えられますが、新たに基礎を増設する必要がある場合は、コストが増す可能性もあります。
・梁の強化
集成材など強度の高い材を使用したり、金物工法によって木材の加工を減らすことが耐震につながります。
◇耐震補強工事で利用できる補助金・割引
■補助金制度
国や自治体では、1981年以前に建てられた建物を対象に、耐震補強工事に関わる費用の一部を補助する制度を設けています。各自治体が実施する補助金事業の中には一般住宅に適用されるものもありますので、ぜひお住まいの自治体ホームページなどを調べてみてください。
■地震保険料の耐震等級割引
地震保険は地震・噴火またはこれらによる津波を原因とする火災・損壊・埋没または流失による損失を補償する地震災害専用の保険です。
耐震等級が高ければ耐震性も高くなり、住まいの安全性・安心感は向上し、耐震等級を上げることにより地震保険の割引が受けられるというメリットもあります。
【耐震等級割引の割引率】
耐震等級1 10%
耐震等級2 30%
耐震等級3 50%
また、耐震等級割引と併用はできませんが、
【免震建築物割引 50%】
「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づく「免震建築物」である場合
【耐震診断割引 10%】
地方公共団体等による耐震診断または耐震改修の結果、建築基準法(昭和56年6月1日施行)における耐震基準を満たす場合
【建築年割引 10%】
昭和56年6月1日以降に新築された建物である場合
があります。
◇社寺建築岡田工務店㈱では…
住宅を取得する際、建築基準法では等級1以上であればよく、等級2・3はあくまで任意の基準です。しかし最近では震度6強以上の地震が10年に1回の頻度で発生しています。
近年の地震の教訓から、地震保険に加入する人も増えていますが、保険に加入していても安心できないのが現実で、大地震の後も住み続けられる家とするには、耐震等級1では不十分です。地震で家が半壊したり大破した後、軽い補修で住み続けられる家と、倒壊は免れたが、半壊・大破し建て直さなければならない家とでは、その後の人生・費用に雲泥の差があります。そのため年々、耐震等級3の建物の割合は増えています。
当社では、耐震等級2・3を確保して、長く安心して住むことのできる耐震性の高い家づくりに力を入れております。
古民家の耐震補強等のお悩みがございましたら、ぜひご相談ください。