古民家は、伝統工法で建てられた建物で、太くしっかりとした柱と梁などの部材を用いて空間を構成し、柱と梁の接合部は金物を使わず、仕口(しぐち)と継手(つぎて)によってつないでいます。伝統工法を用いた古民家には、先人たちによる快適に暮らすための知恵と工夫がつまっています。
古民家の魅力は、歳月を重ねたからこそ生まれる趣や佇まい。とはいえ、築年数が長いため、古民家で暮らしたいと考えリフォームする場合には、さまざまな箇所の修理が必要になることがあります。具体的には、以下の箇所の修繕が考えられます。
▷屋根・外壁
屋根や外壁は、雨風や紫外線などの影響を受けやすいため、劣化が目立ちます。雨漏りが発生すると、建物の内部にまで被害が及ぶ恐れがあるため、修繕が必要です。屋根の修理では、葺き替えや塗装、補修などが考えられます。外壁の修理では、塗装や左官壁塗り替え等の、補修などが考えられます。
【雨漏りの修繕方法】
〇瓦、金属屋根材等の葺き替え
屋根材の劣化(屋根材の耐久年数日本瓦が約50年・ガルバリウム鋼板が約30年)原因の場合は、屋根材を全て取り替える「葺き替え」工事を行います。葺き替え工事では、屋根材の下地となる野地板や垂木なども同時に交換することが多いため、費用が比較的高くなります。
〇瓦、金属屋根材等の補修
屋根材の穴やひび割れが小さい場合、補修工事で対応できる場合があります。補修工事では、穴やひび割れを塞ぐためのシートや板などを貼り付けます。しかしながら、どちらも応急処置にしかならないので、屋根の葺き替えをお勧めします。
〇雨樋の清掃・交換
雨樋は、屋根から落ちてくる雨水を流す役割を担っています。雨樋が詰まってしまうと、雨水が流れなくなり、屋根や外壁に雨水が浸入する原因となります。雨樋の詰まりの主な原因としては、落ち葉の堆積による詰まり、古民家の場合であれば、瓦下の土が雨により溶け出す事によって樋を詰まらせる場合もあります。こういった場合は、雨樋を清掃するか、詰まっている部分を交換します。雨樋の清掃は、自分で行うことも可能です。しかし、足場を必要とする高所による作業になり、危険を伴うので、業者様に依頼することをお勧めします。
そのほかに、積雪による雨樋の修繕の場合は、受金物を増やして強度を上げる、または受金具からステンレス線による引っ張りを強化する方法があります。積雪による修繕の場合は高所の為、業者様に依頼することをお勧めします。
〇雨仕舞いの補修
雨仕舞いとは、屋根や外壁の隙間から雨水が侵入するのを防ぐための工事です。雨仕舞いが不十分だと、雨水が侵入し、雨漏りが発生する原因となります。 雨漏りが起こりやすい部分は、外壁と屋根の取合い部分、棟瓦、谷樋、外壁のひび割れ部分が雨による雨漏りが多く見られる箇所になるので、重点的に確認し雨仕舞いを補修します。
古民家で雨漏りが発生した場合、早めに修繕を行うことが大切です。雨漏りを放置しておくと、建物の内部にまで雨水が浸入し、木材の腐食やカビの発生、シロアリの被害などが発生し、家の倒壊に繋がる危険性があります。
▷耐震性
古民家は、耐震性が低い場合が多いため、地震の際に倒壊する危険性があります。耐震性向上のための修繕は、古民家を安心して暮らすために、非常に重要なポイントです。また、工事開始までに現状の耐震性を診断しておくことも重要です。
【耐震性を向上させるための修繕方法】
〇筋交い・耐力壁の設置
筋交いは、壁と壁を斜めにつなぐことで、建物の強度を高める効果があります。古民家では、筋交いが設置されていない場合や、設置されている筋交いが少ない場合があります。筋交いの設置は、耐震性向上のための最も効果的な方法のひとつです。同様に、壁面を多くとることにより、耐力壁とすることにより耐震性の向上につながります。
〇梁、桁、柱の補強
柱や梁は、建物の骨組みとなる部分です。柱や梁に損傷や劣化があると、建物の強度が低下します。柱や梁の補強は、耐震性向上のために重要な工事です。 具体的には、柱と柱の間が多く離れているにもかかわらず、梁または桁の大きさが適切でない場合、床が傾いたり、中心部分が凹んでしまうことがあります。その場合は、補助梁、補助桁により適切に補強することにより、床の傾きを防止することができます。
〇基礎の補強
基礎は、建物の土台となる部分です。基礎に損傷や劣化があると、建物全体が傾くなどの問題が発生する可能性があります。基礎の補強は、耐震性向上のために重要な工事です。
基礎の補強
古民家の耐震性向上のための修繕は、専門の業者に依頼するのが一般的です。耐震性向上のための修繕は、費用や工期がかかる場合が多いため、事前にしっかりと検討することが大切です。
▷断熱性・気密性の向上
古民家は土壁により壁が構成されているので断熱性・気密性が現代の住宅に比べて低いです。断熱性・気密性を向上させることで、エアコンの効きが良くなります。断熱材を施工したり、窓やドアの気密性を高めたりすることで、室内の温度を逃がしにくくすることができます。
【エアコンの使用効率を向上させるために…】
〇エアコンの容量アップ
古民家は、天井が高かったり、部屋が広かったりする場合が多いため、エアコンの容量が不足している可能性があります。容量をアップすることで、効率よく室内を冷暖房を効かせることができます。
〇エアコンの設置場所の工夫
エアコンは、室内の空気の流れをよくするために、窓やドアの近くに設置するのが一般的です。しかし、古民家の場合、窓やドアの位置が壁の中心にない場合も少なくありません。そのような場合は、エアコンの設置場所を工夫することで、空気の流れを改善することができます。
〇壁や天井に断熱材を施工する
外壁が土壁・天井は気密性・断熱性が低いので、断熱材を施工することで、室内の温度が逃げにくくなります。断熱材には、グラスウールやポリスチレンフォームなどがあります。
断熱性能を向上させることは、家の省エネルギー化をするにあたっては、とても重要なことになります。
〇窓やドアの気密性を高める
窓やドアの隙間から冷気が入るのを防ぐために、気密テープやシーリング材などで隙間を塞ぎます。
古民家でエアコンを効かせるには、これらの対策を組み合わせて行うことが大切です。
▷建具が開けづらい
古民家の建具の開閉が困難になる原因は、経年劣化によって歪みや反りが生じることです。また、建具の戸車や蝶番は、経年劣化によって摩耗したり、破損したりすることがあります。建具の枠や敷居は、湿気や雨水によって腐食することがあります。すると、建具が開きにくくなったり、開け閉めがスムーズにできなかったりします。
【建具が開かない場合の改修工事】
〇建具の歪みや反りの修正
建具の歪みや反りは、専門業者に修正してもらうのが一般的です。修正方法としては、建具を一度解体して、歪みや反りを直す方法と、建具をそのまま補強して、歪みや反りを矯正する方法があります。
〇建具の戸車や蝶番の交換
建具の戸車や蝶番は、自分で交換することもできます。戸車や蝶番は、ホームセンターなどで購入することができます。
〇建具の枠や敷居の補修
建具の枠や敷居の腐食は、専門業者に補修してもらうのが一般的です。補修方法としては、腐食部分を削り取って、新しい木材を埋め込む方法と、部材を取り替える方法があります。
古民家の建具が開かない場合は、原因を特定した上で、適切な改修工事を行うことが大切です。
▷柱等の木部の腐れ
古民家の木部が腐る原因としては、雨水が木部に浸入・木部に湿気が滞留する・カビや虫が木部に繁殖 などが挙げられます。これらが木材の腐食や劣化を引き起こします。
【木部が腐った場合の補修工事】
〇腐食部分の削り取り
腐食部分を削り取って、新しい木材を埋め込む方法です。この方法は、腐食部分が比較的小さい場合に有効であり、全面張替えに比べてコストを抑えることができます。
〇腐食部分の交換
腐食部分を新しい木材に交換する方法です。この方法は、腐食部分が広範囲にわたる場合に有効です。腐食箇所の削ぎ取りに比べて、広範囲になるので工事の日数がかかる場合もあるので、業者さんに確認が必要になります。
〇腐食部分の補修材による補修
腐食部分に補修材を充填して補修する方法です。この方法は、腐食部分が小さい場合に有効です。
腐食部分の削り取りや交換を行う場合は、腐食部分の周囲の木材も腐食している可能性があるため、その部分も含めて削り取ったり交換したりする必要があります。また、腐食部分にカビや虫が発生している場合は、カビや虫を駆除してから補修を行います。
腐食部分の補修材による補修を行う場合は、腐食部分の状態や補修したい仕上がりに合わせて、適切な補修材を選びます。
木部が腐った場合の補修工事は、専門業者に依頼するのが一般的です。腐食の状態や木材の種類などを考慮して、最適な補修方法を提案します。
▷家の傾き
古民家は、新築住宅と比べて地盤が弱い場合が多く、地震や雨水などの影響で傾くことがあります。家の傾きが大きくなると、建物の強度が低下し、倒壊の危険性があります。家の傾きの原因としては、以下のものが挙げられます。
地盤沈下…地盤が軟弱な場所に建てられた場合、地震や雨水などの影響で地盤が沈下し、家が傾くことがあります。
地震…地震によって、家の基礎や土台が損傷し、家が傾くことがあります。
雨水の浸入…雨水が土台や基礎に浸入して、腐食や劣化を引き起こし、家が傾くことがあります。
【家の傾きにおける改修工事】
〇基礎の補強
基礎が損傷している場合は、基礎を補強する工事を行います。基礎の補強には、コンクリートや鋼管などを用いて基礎を補強する方法があります。
〇土台の補強
土台が損傷している場合は、土台を補強する工事を行います。土台の補強には、木材や鋼材などを用いて土台を補強する方法があります。
〇建物のかさ上げ
建物全体をかさ上げする工事を行います。建物をかさ上げするには、鋼管や鋼矢板などを用いて建物を持ち上げる方法があります。
家の傾きの改修工事の費用は、傾きの程度や工法によって異なります。家の傾きの改修工事は、家の傾きの原因や程度を調査し、最適な工法を提案する専門業者に依頼するのが一般的です。
▷兵庫県内の古民家リノベーションを手掛けている社寺建築岡田工務店株式会社です。
弊社では自社大工による打ち合わせ~施工までを行います。宮大工は神社仏閣の建築や修繕に携わる大工です。その技術と知識は、古民家にも活かされています。古民家は、伝統的な技術と知識によって建てられた建物です。木組みの技法を用いて、強度と耐久性に優れた建物が造られています。近年、古民家をリノベーションする際に、宮大工の技術や知識を活用するケースが増えています。古民家の持つ風情や歴史を残しながら、現代の暮らしに合うように改修する際に、宮大工の技術は欠かせません。
古民家の持つ風情や歴史を残すために、できるだけ原形をとどめたままの改修を心がけます。宮大工の技術と知識を活かした古民家改修は、古民家の持つ魅力を最大限に引き出し、現代の暮らしに適した住まいに生まれ変わらせることができます。
ご相談・御見積は無料ですのでお気軽にお問い合わせください。