『木』は日本の家づくりで最も身近な建築材料であり、私たちの住まいに欠かせない素材です。
住宅は長く使うものなので、丈夫で傷みにくいものを建てたいという方が多いです。最近では大きな地震も頻繁に起きているため、強度に対する不安がある方もいらっしゃいます。丈夫で傷みにくい家を建てるためには、木材選びが大切です。
木造住宅に使われる木材には、さまざまな種類があります。住宅を建てる際は、それぞれの木が持つ色合いや木目・強度・耐久性といった特性に合わせて、構造材や内装材として使い分けされています。実際に住宅を建てるとなると、柱にはどの木材が適しているのか、また床材はどの木材にするのが良いのかなど、あまり詳しくは知られていません。
しかし今も「木の家」の人気は変わらず、内装や家具などさまざまなシーンで木が好まれ、使われています。それぞれが特性を生かした製品となって、私たちの住まいと暮らしを支えています。
今回は木造住宅に使われる木材の種類と特徴についてご紹介します。
◇木材選びのポイント
【耐震性】
程よい硬さとしなやかさを持つ木は、とても強度の高い建築材料です。
スギの圧縮強度はコンクリートの6倍、引っ張り強度も鋼鉄の4倍 にのぼると言われています。ただ、木は自然から生まれているので、個体差が大きいのも特徴です。
強度性能を確認する場合は、木の種類ではなく木の品質を表す「JASマーク」 が目安となります。
【シロアリに強いか】
白蟻は木材を食い荒らし、木をスカスカのスポンジ状にしてしまいます。
そうした被害を防ぐために防蟻処理を行うこともできますが、白蟻に対する耐久性が高い木材を選べば、よりリスクを減らすことが出来ます。
【カビ・腐食しにくいか】
カビや腐食も木材には大敵です。木材は腐るともろくなり、建物の倒壊リスクが高まります。腐食に対する耐久性は木材によって異なるので、より耐久性が高いものを選ぶのがおすすめです。
◇木材の種類
【無垢材】
無垢材は、一枚の木から切り出された天然の木材です。加工が少なく天然の質感が残っているのが特徴です。また、調湿作用や化学物質の放出が少ないため、健康にも優しい素材として注目されています。
無垢材のフローリングは、年月が経つごとに色合いが変化し、独特の味わいを増していくのが魅力です。
しかし、1本の木から切り出した部材を使用するため、均一な品質の維持や大量生産が難しいので価格が高くなる傾向があります。
また自然な素材であるため、環境の変化による反応が顕著で湿度や温度の変化に対して敏感であり、膨張や収縮が発生しやすい傾向にあり、キズやへこみも生じやすいです。
【集成材】
細かく切った木のパーツを接着剤で接合し、整形した木材です。人の手によって作られるので品質が安定しており、湿度による変形も少なく加工しやすいのが魅力です。集成材の技術の進歩は高く、住宅だけに止まらず、巨大な体育館や中層ビルの建材としても活用されています。そのため最近の住宅では、目に見えるところには無垢材を使い、壁に隠れる構造材などには集成材を使うやり方が一般的になっています。一方で、集成材ができてまだ年数が経っておらず、長期的な耐久性が未知数であるという注意点もあります。
◇木材の特徴
【ヒノキ】
ヒノキは、抗菌・防虫作用のあるヒノキオールや木材腐朽菌の繁殖を抑制するαカジノールといった成分を含み、菌や虫に対する耐性が高い木材です。湿気や水濡れ・シロアリに強いので、特に耐久性が求められる土台などの構造部分の素材として最適です。古くから神社仏閣から住宅まで、土台や重要な骨組みとなる構造材として活躍してきました。さらに、木肌が美しく、香りもよいため、壁や床、天井などの内装材としても人気が高い木材です。
欠点は値段が高いことで、家の木材すべてをヒノキにすると予算が高くつくことを覚悟しなければなりません。
しかし、ヒノキのフローリングは断熱性にも優れており、季節を問わず快適な室温を保てるため、冷暖房のランニングコストの削減が期待できます。
屋外で使用しても腐りにくい木材となっています。
【スギ】
スギもヒノキと同様、古くから日本で使われるお馴染みの木材です。
ヒノキほどではありませんが十分な強度があり、値段が安いので建築素材として人気です。
太い木材を使うことでヒノキに劣る耐久性をカバーし、湿気やシロアリにも強いのでこちらも構造部分として使われています。
スギの木目は真っ直ぐで、柔らかい、軽い、加工しやすい、耐水性に優れているといった特徴から床材や壁材など幅広く使われています。また、気密性が低いため湿気が逃げやすく、反りの原因にもなっており、加工をしても変形しにくくなっています。
足触りが良く、リビングや寝室などリラックスしたい空間におすすめです。
【ヒバ】
ヒバは、抗菌・防虫作用のあるヒノキチオール(ヒノキオールとは異なる成分)などを含み、菌や虫などに対する耐性が高い木材です。ヒノキチオールの含有量は、ヒノキの約10倍とも言われており、シロアリ対策への高い効果が期待できます。ヒノキと同様に、土台や重要な骨組みとなる構造材などとして、幅広く活用されています。また、ヒノキと比較すると安価であることも特長です。
【クリ】
木目ははっきりしていてナチュラルな雰囲気があって、黄褐色~淡い茶色の落ち着いた色合い特徴です。非常に硬く耐摩耗性が高いため、長く使える頑丈な木材です。
クリは、水気や菌・虫に強く、特に腐朽に対する耐性が高いのが特長です。昔から木造住宅の土台や浴室の用材として重宝されてきました。フローリングやウッドデッキ、家具、建築材など、屋内外問わず幅広い用途で活躍します。
またその耐久性の高さに加えて、木目が美しいことから、床や階段、棚、テーブルやイスなどにも、広く活用されています。
【ケヤキ】
ケヤキは、日本を代表する広葉樹で「木材の王様」とも呼ばれています。
非常に硬く、しなやかで強く、腐朽に対する耐性が高いのが特長です。
美しい木目で渦を巻くような複雑な模様があり、高級感を演出します。そのため和家具の材料などとして重宝されていました。
また、木造住宅の大黒柱や柱といった骨組みなどの構造材として活用されています。ただし非常に硬いことから、加工には高い技術を要します。
また、広葉樹であるケヤキはヒノキと異なり、年数が経つにつれて強度は低下します。
【マツ/パイン材】
パイン(マツ)材は、熱伝導率が低いといわれており、冬などでも快適に過ごすことができます。
パイン材のメリットとして、他の木材よりも安価である点が挙げられます。パイン材は流通量が多いため、比較的安価な値段で調達することができます。
パイン材は一般的に柔らかく、加工がしやすい材質ですが、一方で傷やへこみができやすい材質とも言われております。何かを落としたり、ぶつけたりしてしまうとすぐに傷めてしまうため、子どもやペットなどがいるご家庭は注意が必要であると言えます。
またパイン材や柔らかい木材は、シロアリにやられやすいというデメリットがあります。シロアリは柔らかい材質が好きなため、管理やメンテナンスに注意が必要です。
【チーク】
チークとはクマツヅラ科チーク属の広葉樹の総称で、日本で手に入るチークはほとんどがインドネシアで植林されたものです。
チーク材は、高級木材として知られ、特に高い耐久性と耐水性を持ちます。天然の油分を多く含み、水や虫、腐食に強いという特徴があります。経年変化で深い飴色に変化するのも魅力の一つです。
加えて、高密度であり高硬度のため、長年使用しても狂いが生じにくく耐久性が高い点も、屋外での使用に向いていると言えます。
ただ高級木材であるため、価格が高いです。
【ナラ】
ナラはチーク同様、高密度、高硬度のため、丈夫で狂いにくい木材です。重厚感があり、液体が染み込みにくい高い耐水性を持ち、その上、木目の美しさが特長的で、家具や床材に利用されます。さらに防虫効果の高い「タンニン」が多く含まれることから、水廻りでの使用に適した木材です。
水分に強い特徴から、ウイスキーの酒樽にも使用されています。ナラは、虎斑と言われる虎の模様にも似た木目が特徴でもあり、長く使い続けるほど味わいの出る木材です。
しかしナラ材は硬い性質があるので伸縮性が低く、湿度による膨張や乾燥による収縮を繰り返すうちに割れてしまうリスクを伴います。なお、釘を打つ前に下穴をあけるなどひと手間が必要となるため、加工性が低い木材といえます。
*湿気に強い木材は?
日本の気候は夏の湿度が高く、冬は乾燥しているのが特徴で、木造住宅はこのような気候に最適な建材です。木材は湿度の変化に対応し、湿気を吸収・放出する特性を持っています。夏場は蒸し暑さを和らげ、冬場は乾燥を防ぐ役割も果たします。
木材は自然由来の素材ですので、時間が経つと菌によって分解されて土に戻ります。菌が繫殖し分解する速度には水分が大きく関係しているので、木材の寿命は湿気や菌への耐性に依存しています。
つまり湿気に強い木材の特徴としては、菌類に対しての抵抗力に優れており、湿度が高い状態でも腐りにくいことが挙げられます。
木材の腐りにくさは5段階に分けられています。
木造住宅で使用されることの多い木材での例
1段階 チーク(最も優れている)
2段階 ヒノキ
3段階 スギ・桐
4段階 メープル(やや悪い)
5段階 モミ(最も低い)
熱帯地方で育った木材やヒノキやスギのように香りの付いた木材は、腐りにくいとされています。ヒノキは湿気に強く耐久性が高いため、浴槽や水回りの製品に使用されるケースが多いのが特徴です。
このように現代では豊富な種類の木材が流通しています。
ひとえにどの木材が一番優秀かは決めきれないと言えるでしょう。
◇社寺建築岡田工務店㈱では…
このように家づくりや暮らしの中で使われる『木』には、さまざまな種類があります。さまざまな木材の特徴を知ることは、理想の家づくりの際にきっとお役に立つでしょう。
住宅を建てる際、価格や耐震性能に注目する人は多いと思いますが、長く安全・快適に暮らすためには木材選びも重要なポイントになります。ぜひ皆さんも、木材についてチェックしてみてくださいね!
木材によって価格にもかなり幅がありますので、イメージとコストを天秤にかけながら、納得のいく住まいづくりを進めてください。
木材は、鉄やコンクリートよりも丈夫な優れた建材です。また、木の持つ温もりと優しさ、木目の美しさは何にも代えがたい魅力があります。ただし、これら特長を活かすには、さまざまな木の特長を正しく理解し、高い技術を持って扱うことが必要不可欠です。木造住宅を建てる際は、そのことを考慮してハウスメーカーや工務店を選ぶとよいでしょう。
当社では木材一つ一つの材質にこだわり、耐久性と美しさを兼ね備えた木造住宅をつくっています。細やかなコミュニケーションを大切にし、専属の職人が責任を持って、希望の家づくりを叶えます。
こだわりの家づくりをされたい方、ぜひ一度ご相談くださいませ。